医学生→研修医→そして臨床研究
(2011年12月15日 23:23)
医学生の皆さん、こんにちは。先日の学生さんとの飲み会で、研修医ブログを楽しみにしています、との意見を多数いただきましたので、今日はいつもの写真特集をやめて、学生から研修医になるとどのように変わるのか、そして臨床研究について書きます。
国家試験という観点からは、胸背部痛があって、血圧の左右差があれば、大動脈解離ですね。腹部に拍動性の腫瘤を触れると、大動脈瘤ですね。ピンク色泡沫状の痰と言えばうっ血性心不全だし、飛行機に乗ったら肺塞栓になりますね。それはそれで必要な知識なので、覚えておいて下さいよ。臨床でそのまま使えないからと言って、知らなくていい知識ではない。
実際の1年目研修医たちの現場はどうかと言うと・・血圧の左右差のある大動脈解離はあんまりいないし、腹部に拍動を触れることはしばしばあるし、聴診だけで「心不全はないと思います」とか言うとえらく怒られたりするし、飛行機に乗ってないけど「肺塞栓は否定できないね」なんて指導医が魔法のように診断したりしている。確かに教科書をよく読んでみると、感度とか特異度とか、陽性適中率とかオッズとか、公衆衛生かどっかでちょっとだけやった言葉が並んでいて、そこに答えはあるらしい。
「髄膜炎-項部硬直」と覚えるのが医学生だとすれば、1年目研修医の到達目標は「項部硬直があれば髄膜炎は疑わしいが、項部硬直がなくても髄膜炎は否定できない」になる。ここまではどの臨床研修病院でも必須でしょう。では、髄膜炎の何%が項部硬直陽性になるのか? 論文、教科書を調べるのももちろん大切ですが、こうした疑問に答えるのが「臨床研究」です。
実際の当院での臨床データではどうなのかを、カルテを繰ってまとめてみる。幸い症例数が多いので、頻度1%の疾患について2群に分けてもまだ45vs45くらいになって、価値のある分析ができる。研究と言っても、研究のための研究ではなく、実際に学会で発表し、批判を受けて、また調べる中で力をつけて、それを臨床に生かしていくための研究。2年間でここまでやることが、東徳洲会の初期研修の目標です。ただ単に、忙しくて、症例を多くこなし、手技ができるだけの、classicalな徳洲会のイメージからは、一線を画しているのです。